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古上織蛍の日々の泡沫(うたかた)

歴史考察(戦国時代・三国志・関ヶ原合戦・石田三成等)、書評や、        日々思いついたことをつれづれに書きます。

スティーブン・R・コヴィー「7つの習慣」書評

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 スティーブン・R・コヴィー「7つの習慣」(キングベアー出版)の書評をします。

この本はいわゆる自己啓発本です。副題に「成功には原則があった!」とあります。そして、その副題のとおり成功する原則についてこの本は書かれています。

この本の「成功の原則」は非常に良くまとめられていて、この本を読んでしまうと、他の自己啓発本は、ほとんどがこの本の焼き直しなのではないかとすら思えてきます。そういった意味でこの本は自己啓発本の「古典」といってよいと思われます。

 

この本に書かれている「成功の原則」はシンプルですが、実践するのはかなりしんどいです。正直私がこの本を読んだ感想は「こんなしんどいことを毎日実践しなければ『成功』できないなら、自分は『成功』しなくていいや。」でした。

 

しかし、こうした「成功の原則」を実践している人達は確かにいます。いわゆる世界トップレベルの一流のスポーツ選手達は日々この「成功の原則」を実践しているようにみえます。彼らには敬意を抱きますが、私はもう少し平凡な人生でいいです。

 

私の個人的な感想はこれまでにして、この本の解説に移ります。「7つの習慣」というタイトルの通り、成功の原則には「7つの習慣」があります。以下個別に見ていきます。

 

第1の習慣 主体性を発揮する

成功するためには、主体性を発揮して行動する必要があります。受け身で口を開けていれば、成功が転がりこんでくるということはほとんどありえません。まれにあったとしても、その幸運自体が人生のトータル的には罠になって童謡「まちぼうけ」の歌詞のごとく破滅の原因になることすらあります。

きわめてシンプルな「成功の原則」です。

 

第2の習慣 目的を持ってはじめる

ここら辺あたりから、私は挫折し始めます。この本では「ミッション・ステートメント」を書くことを勧められます。いわゆる「人生の目標」を文章にして書くということです。

 

ちょっとやってみましたが、ものの見事に何も思いつきません。就活の時期によく「自己分析」しろと言われます。あれが、私は非常に苦手で苦痛でした。語るべき自分など私には何もありません。しかし、履歴書の自己紹介欄を空白にするわけにもいかないため、何とか目的やエピソードを無理やりひねり出して埋めますが、まるで自分ではないような人間を自己紹介しているような嫌な気分になったものです。

この「ミッション・ステートメント」を書こうとすると、その時と同じ気分がよみがえります。何も書くことがないのです。いや、あるだろ普通と思いつつ何も思い浮かびません。 

何も思い浮かばないと、まるで自分はからっぽの人生を送っているかのような絶望的な気分を味わえます。

30分考え、やっと1行書けました。「平凡な人生を送る。」これでいいです。この困難な世知辛い世界で「平凡」に生きるだけでも立派な目標です。

「平凡」な人生とはなんぞや、という哲学的な問いはいりません。「平凡な人生」の良いところは、何が「平凡」であるかを考えなくてよい人生だということです。

 

たとえば、小学生の頃の作文に「ACミランの選手になる」と書いて、その夢の実現のためにその頃から本当に努力している人間と、何も将来のことなんて考えず、ぼーっと少年時代を送っていた人間とでは、そもそも成功へのスタート地点から違います。

 

第3の習慣 重要事項を優先する

この本では、「時間管理のマトリックスというものが示され、実行すべき物事を4つの領域に分けます。

 

第一領域 緊急かつ重要な物事

第二領域 重要ではあるが緊急ではない物事

第三領域 緊急ではあるが重要ではない物事

第四領域 緊急ではないし、重要でもない物事

 

そして、このうちの第二領域を優先して力を入れよというアドバイスがされます。世の中の人間は普通、第三領域を優先して行動しようとするが、そのことによっていつも「緊急ではあるが重要ではない物事」に追いまくられ、本当に重要なことができなくなってしまうのです。

第二領域の物事に力を入れると、結果的に第一領域や第三領域の物事も減り、より第二領域にあてる時間も増えます。

 

このアドバイスはまったく正しいのですが、実際に実行する物事をこの4つの領域のどれに分類するかということ自体に能力が問われます。この本はシンプルであるがしんどいというのはそういうことです。

 

第二領域とは、「ノルウェイの森」の永沢さんが、「たとえば就職が決って他のみんながホッとしている時にスペイン語の勉強を始めるとか、そういうこと」です。やれやれ永沢さん、あなたは立派ですよ、僕には真似できない。

 

 第4の習慣 WinWinを考える

このWinWin思考というのは有名になりすぎて、かえってビジネスマンでウィンウィンいう奴は詐欺師だと言われるほどうさんくさい言葉になってしまいましたが、もちろん意味自体はシンプルで正しいです。しかし、この本でそれ以上に重要なのは「Win-inまたはNo eal(取引しない)」という選択枝を提示しているところです。相手とWin-Winが築けない取引ならば、取引自体を断る勇気も必要です。少し前のビジネス本に「断る力」(読んでいません)というのがありましたが、時には取引を断る勇気も人生には必要です。

 

第5の習慣 理解してから理解される

相手を理解する、非常に重要なことです。このことを実践できている人間は少ないです。しかし、困難であっても相手を理解しようとする意思を持つことから始めないと理解することはできません。相手を理解するために必要なのは想像力です。しかし想像力の欠如した、他人を理解できない人間でも、実際にはそこそこ成功して組織のトップになってしまったりしてしまうこともよくあります。これがしばしば世の中の悲劇を生みます。

 

第6の習慣 相乗効果を発揮する

第5の習慣の応用版です。だから、第5の習慣(相手を理解する)ができない人間はこの習慣も実践できません。

この習慣を実践できている人ってかなり少ないんじゃないでしょうか。第1~第3の習慣は「私的成功」の領域とされ、社会的に成功している人のほとんどが実践していると思われます。第4~第6の習慣は「公的成功」とされていますが、いわゆる「社会的に成功した」といわれる人物でも実践できている人は少ないかもしれません。もちろん、実践できている人もいますが、問題はむしろ、第4~第6の習慣が実践できていなくても、そこそこ社会的には成功できてしまうということなんですね。

 

第4~第6の習慣が実践できていない人物が会社の経営者とか組織のトップだった場合は、その社会的成功を継続的に維持できないことが多いです、と言いたいのですが、維持できない人もいれば、維持できている人もいるという感じですかね。

経営者で一度成功しても、その後失敗する人は大体この第6の習慣で失敗します。組織のトップであるということは、社員の相乗効果を発揮させることが仕事です。ところが、多くの経営者は第1~第3の習慣の実践で成功しています。そこで大体思考が止まってしまって「公的成功」の習慣に踏み込もうとしません。そのかわりに何をするかというと自分の価値観の押し付けです。第1~第3の習慣の実践で成功した方法論を自分の社員にもそのまま押し付けようとするのです。相手が違う人間だということを理解できないのです。

 

この「7つの習慣」の「公的習慣」の部分は組織のトップと名の付く人には是非読んでいただきたいのですが、多分読んでないか、読んでいても自分に言われているんだとは気が付かない人が多いのだろうなと思います。

 

第7の習慣 刃を研ぐ

第1~第6の習慣を継続的に実践できるように体力・精神力(肉体、社会・情緒、知性、精神)を養うということです。本書に書かれている事例は正直あまりピンときません(いえ、常識的なものなのですが)でしたが、体力・精神力の養い方は人それぞれで、自分で見つけていくしかないのかな、と思います。

 

以上、7つの習慣をみてきましたが、この本は「成功」したい人間以外は読む価値はないかというとそんなことはないです。人生平凡に生きようと思っていても、世の中いろんな困難な局面にぶつかる事があります。失敗したらまずいこともあります。

その中で「成功」する人の思考回路をなぞって行動することによって、困難な状況を打開できるかもしれません。もちろん、そんな困難な状況にぶつからないことが一番なのですが。