古上織蛍の日々の泡沫(うたかた)

歴史考察(戦国時代・三国志・関ヶ原合戦・石田三成等)、書評や、        日々思いついたことをつれづれに書きます。

腐った桃の方程式

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 石田三成の話で以下のような逸話があります。(ウィキペディアからの引用ですいません。)

 

「ある年の10月、毛利輝元から季節外れの桃が秀吉への献上品として届けられた。三成は毛利家の重臣を呼び、「時節外れの桃とはいえ中々見事でござる。しかし時節外れゆえ、公(秀吉)が召し上がって何かあれば一大事でござるし、それでは毛利家の聞こえも悪くなりましょう。ゆえに時節の物を献上なされよ」と突き返したという。心ある人は「もっともな事であり、三成のような才人こそ武人の多い豊臣家で公に最も信任されているのだ」と評したが、大半の人は秀吉の権勢を傘に着て横柄だと評したという。」(小早川能久の『翁物語』)。

 

 これは一般に、三成の杓子定規で融通のきかない性格を示す逸話とされます。まあ、この話自体がフィクションだと思いますがね・・・。

 さて、上記のような三成の対応は、一般的に「杓子定規で融通のきかない」対応と扱われますが、果たしてそうでしょうか?考えてみると三成の対応こそがベストアンサーなのでないでしょうか?

 

 まず、前提として「おそらく贈られた桃は腐りかけていた」という可能性があります。広島(だと仮定します)から大坂に送られてきたわけですから、その間に腐りかけてしまったのかもしれません。

(この話はフィクションなので「いや腐りかけているとは限らないだろ」という突っ込みはなしでお願いします。)

 秀吉の大事な同盟大名、毛利輝元から送られてきた物なのです。失礼な対応はできません。それでは、他の対応でどんなのがありうるかで考えてみましょう。一つの思考実験ゲームとして考えてみてください。 

 

1.「この桃は腐っているので、お返しします」

→この対応はNGです。毛利殿は無礼にも腐った桃を秀吉に贈ったことになってしまい、せっかくの毛利の好意の桃のはずが、毛利の面目丸つぶれになります。相手に恥をかかせてはいけません。

 

2.そのまま秀吉に献上する。

→これもいけません。献上された桃を見て秀吉が「この桃は腐っているではないか!誰がこんな桃を持ってきたのじゃ!」とか言い出したら、やはり毛利の面目は丸つぶれになります。下手をすると「こんな腐った桃を送ってくるとは、毛利殿にはわしに害意があるのかもしれん」とか言って外交問題に発展しかねません。

 もっといけないのは、秀吉が「なんかこの桃は腐りかけているようにみえるが、珍しい桃というし、食べてみるか。腐りかけの(熟し切った)桃が一番うまいというし、毛利殿がわざわざ贈ってきてくれたんだし」とか言って食べてしまった場合です。これで、特に秀吉が体調を崩さなければ笑い事で済みますが、腹をこわして病気になった日には、「こんな体を悪くするような物を送ってくるとは、さては毛利殿はわしに害意が?」とかいう話になってしまいます。これも戦争になりかねません。

 

3.自分が預かっておく。

→これは最悪です。主君への贈り物を勝手に預かるなど横領です。下手すると処断されます。

 

4.黙って捨てる。

→対処方法に困って捨ててしまうなど、小学生か、という感じです。後で毛利の方から「贈りました桃は、いかがでしたしょうか」とか手紙が来たらどうするのでしょうか。その手紙も握りつぶすのでしょうか。最初にごまかそうとすると、次もごまかさざるを得なくなり、事態はどんどん深刻化し取り返しのつかないことになります。

 

と、上記のように考えていくと、話にあるような「時節外れの桃とはいえ中々見事でござる。しかし時節外れゆえ、公(秀吉)が召し上がって何かあれば一大事でござるし、それでは毛利家の聞こえも悪くなりましょう。ゆえに時節の物を献上なされよ」と突き返したというのが、一番適切な対応に見えます。

 

 秀吉も傷つかず、毛利も傷つかず、すべて丸く収まり・・・、あれ、三成(の評判)が傷ついていますね・・・。

 秀吉も毛利も三成も傷つかない最適な答えは、私は見つけられませんでした。皆様で「こういうベストアンサーがあるぞ」という方がいらっしゃいましたら、ぜひお教えください。よろしくお願いします。