古上織蛍の日々の泡沫(うたかた)

歴史考察(戦国時代・三国志・関ヶ原合戦・石田三成等)、書評や、        日々思いついたことをつれづれに書きます。

【大河ドラマ 軍師官兵衛】石田三成「NHK!、わしを陥れるためにここまでやるか!」

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 いや、久々に酷いドラマを見ました。「大河ドラマ 軍師官兵衛」です。このドラマは、正直興味がなく、ほとんど見なかったのですが、たまたま第40話「小田原の落日」を見てしまい、あまりの滅茶苦茶に呆れました。

 まあ、クライマックスの小田原攻城の筈なのにまともな戦闘シーンすらないというのは、もうどうでもいい(NHKも予算がないのでしょう)ですが、一夜城の後、和睦の条件に「相模、伊豆2国安堵するから降服せよ」なんてのが出てきました。「あれ、そんなの史実にあったっけ(記憶にないな、新説か?)」と思いながら見ていると、黒田官兵衛小田原城に行って(ここで、たった1騎で行く官兵衛も酷いですし、使者に向かって弓を放つ北条の兵も酷い。脅しの割には近くに撃って官兵衛は頬に怪我してるし、実際に狙って撃ったなら外し過ぎ)2国安堵の条件で和睦の説得をして成功させるところまでは、良いです。

 そして、北条氏降服、小田原城開城、官兵衛すごい!という流れも、良いでしょう。官兵衛主役ですし。
 しかし、その後あっさり秀吉によって2国安堵が反故にされ、氏政切腹、氏直高野山追放となって北条氏滅亡します。官兵衛「約束が違う!」と驚愕。秀吉が「北条から色々礼の品をもらったらしいな」みたいことを官兵衛に言います。誰がそんな讒言を・・・と、官兵衛は秀吉の隣の石田三成を睨む。。。石田三成が今回の約束反故の画策をしたことを匂わせてこの回終わり(だったかな?)。

 いや、何が酷いってこの「2国安堵」という話そのものが、史実として存在しません(思わず調べ直してしまいました)。だから、三成の讒言云々の話も存在しません。はじめに伊豆・相模・武蔵の安堵の条件で和睦交渉をしたが北条氏が拒否した話はあったようですが(この時の交渉は徳川家康織田信雄が中心でやっていたようです。)黒田官兵衛等が最終的に和睦交渉に入った時には、最早北条氏の滅亡は避けられないものとなってました。この時点では徳川家康の関東入りも既定路線となっています。つまりこの「2国安堵」なる条件の話は、脚本家が勝手に創作したのです。「そういう逸話もある」レベルの話ではなく、後世の全くの創作です。(以下追記参照)

(*追記:『武徳編年集成』(成立年は元文5(1740)年、著者は幕臣木村高敦)という書物に「2国安堵」で黒田官兵衛が交渉したという記述があるようです。 

 しかし、上記(2国安堵)のように官兵衛が交渉した事は当時の文書には全く見えず、この話は江戸時代中期に創作されたものです。何故このような創作がされたのかは江戸時代の幕臣が、秀吉を貶めるためだと考えられます。

 ちなみに、この書物には特に三成が官兵衛の交渉を妨害した記述はないので、この書物内ですら三成は関係ありません。というか、小田原開城の頃には石田三成は忍城攻めからすぐに奥州仕置きを命じられて奥州へ向かっていますので、この時三成が秀吉の側にいるというドラマの描写はデタラメです。)

 

 なぜこんな演出にしたのか?このような条件を見せつつ、それをあっさり反故にした秀吉と、画策した三成の悪辣さを見せるだけのためにです。いや、本当酷いですわ。歴史上の特定の人物を誹謗し貶めるために、わざわざ天下のNHKが江戸時代に明らかに創作された話を全国ネットで流しとるんですわ。「いや大河ドラマってフィクションなんだし」と言う人もいるかもしれませんけど、歴史小説・ドラマでフィクションを書く、しかも特定の人物を貶めるには、それなりのフィクションを書くための「仁義」が必要なんじゃないですかね。

 たとえば、今回の「軍師官兵衛」なら黒田官兵衛が主役なわけですから、この創作によって官兵衛が格好良く見えれば、まあ許せます。しかし、この創作で官兵衛格好良いですか?この回のはじめの段階で既に石田三成は悪役で要警戒な人物の設定になっています。なんか周りの人も三成に気を付けろと助言してきます。それにも関わらず、三成の画策に気が付かず和睦条件を反故にされるとは、官兵衛バカ過ぎです。どこが軍師なのか。実際に、普通に降服条件を確定させるなら、秀吉の公式な書状を貰うなど色々やりようはあります。なんか、関ヶ原の戦い徳川家康に騙された毛利輝元みたいですね。

 しかも、その前のあたりのドラマのあらすじとか見ていると城井氏との事件でも「領地安堵で説得→秀吉が約束反故」という流れがあったみたいですね。2度同じパターンで騙される官兵衛って一体どうなのよ、という感じです。この脚本家、絶対黒田官兵衛のこと嫌いだろ、と思います。

 第42話の話を書こうとしてなんかもう気力が無くなりました。というか、全く同じパターン(脚本家が石田三成を貶めるために歴史を捏造して(もういちいち指摘するのもアホらしい程酷い)、黒田官兵衛は三成に騙されるアホだという扱いにする)なので・・・。しかも、ここまで三成悪役設定で官兵衛との仲最悪なのに、更に騙される官兵衛って・・・。フィクションと考えても脚本家に悪意しか感じません。

 第42話で、黒田官兵衛に「(三成)、わしを陥れるためにここまでやるか!」と言わせてますけど、石田三成こそが声を大にしてこう言いたいでしょう。

 

「NHK!、わしを陥れる(貶める)ためにここまでやるか!」

 

 第42話「太閤の野望」の感想は↓をご覧ください。

【大河ドラマ 軍師官兵衛】田中圭「田中圭のことを嫌いになっても、石田三成のことは嫌いにならないでください!」 に続く