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古上織蛍の日々の泡沫(うたかた)

歴史考察(戦国時代・三国志・関ヶ原合戦・石田三成等)、書評や、        日々思いついたことをつれづれに書きます。

オリーブグリーン革命

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 (以下は、村上春樹氏の小説の登場人物を使ったパロディ小説です。よろしければご覧ください。)

 

僕はその時、五反田君の部屋で彼とウイスキーを飲みながら、テレビを見ていた。

テレビでは五反田君がドラマに出ていた。といっても新番組ではなく再放送のようだ。彼の役は、何かを作っている技師の役らしかったが、やはりハンサムな役柄だった。いや、彼がどんな職業を演じようと、彼が演じればそれはハンサムな役柄になってしまうのだ。考えてみれば当たり前のことだ。

 

テレビの中の彼は、シャワーを浴びた後らしく、バスローブを着てベランダの椅子に座って夜の風に吹かれていた。

そこで五反田君は僕の方を振り返り、「どう思う?」と聞いた。

「どう思うって?」僕は聞き返した。

「あのバスローブだよ。オリーブグリーンの。クソださくないか?」

「そうかな?」正直僕は彼に言われるまで、彼のバスローブの色など気にもとめていなかった。確かにオリーブグリーンのバスローブというのはクソださいのかもしれないが、彼が着てしまうと、全てがおしゃれで優雅に見えてしまうのが不思議だった。彼ならばウンコ色のバスローブだっておしゃれに着こなしてしまうだろう。

 

「実を言うとね」と彼はよくない秘密を打ち明けるように眉をひそめて言った。「あのバスローブ、有名なデザイナーがデザインしたものらしい。それで、ドラマで僕が着ているのを見て、テレビ局に問い合わせがあって密かに売れたらしいよ。いわゆるステルスマーケティングという奴だ。信じられるかい?オリーブグリーンのバスローブだよ?くだらない」

「なるほど」僕はつぶやいた。なるほど、世の中にはいろいろな需要があるものだ。

 

そして彼はテレビを見て眉をしかめて、小さな声で言った。「ひどいドラマ。ひどい監督。ひどい脚本。ひどいバスローブ。いつもと同じだ。反吐が出る。僕だったらもっと全然違った話を書くね」

「例えば?」

五反田君は、ウイスキーのグラスを持ちながら考えた。

「こんなのはどうだい?

昔、ある王国に王様がいた。王様は暴君でね、そしてオリーブグリーンが大嫌いだった。それでね、国中にお触れを出してオリーブグリーンのものを禁じたんだ。国中にあるオリーブグリーンの服やらオリーブの実やらが王宮の庭に集められ、燃やされた。オリーブグリーンの服を着ている人間は牢屋にぶちこまれた。禁令は時間が経つにつれ、どんどん厳しくなっていき、過去にオリーブグリーンの服を着ていても牢屋にぶちこまれるようになった。密告が奨励され、次々と人々は牢屋に入れられた。

 

そこで、主人公の登場だ。彼は俳優で、かつて舞台でオリーブグリーンのバスローブを着た役を演じたことがある。別に彼が着たかったわけじゃなくて、舞台の監督からこれを着ろといわれただけなんだけどね。それでも、彼は過去の罪を問われ、政府から追われることになる。そこを革命軍が彼を助ける。暴君である王様を打倒するために革命軍が密かに結成されていたんだ。でも、彼らが革命軍であることはすぐ分かった。彼らはオリーブグリーンの布をつけていたからね。

『蒼天すでに死す。オリーブグリーンまさに立つべし。』が彼らの合言葉だった」

なんか、全然五行説と合っていないような気がしたが僕は黙っていた。もともとオリジナルの言葉も五行説と合ってないし、たいしたことではない。

 

「そして、革命勢力は野火のように国中に広がった。俳優の彼は英雄に祭り上げられた。彼は、オリーブグリーンなんて好きじゃなかったのだけどね。

革命勢力はやがて王朝を打倒し、王様は捕らえられた。王様はギロチンにかけられ、遺体はオリーブグリーンのバスローブにくるまれて埋葬された」

やれやれ、王様が暴君で処刑されるのは同情の余地はないにしても、死んだ後も自分の嫌いなものにくるまれて埋葬されるのはちょっとかわいそうな気がした。

 

「主人公の俳優は革命の英雄とされ、新政府から『バスローブ大臣』になるように依頼を受けた。もちろん、彼は固辞した。バスローブのことなど彼はよくわからないからね。それでも、彼はしばらくの間英雄として扱われた。

しかし、ある時彼はぽろっと「オリーブグリーンのバスローブなんてクソださい」と言ってしまった。彼は、革命政府から王党派のスパイとみなされ、ギロチン行きになってしまった。かくして革命の英雄に祭り挙げられた彼は、王党派のスパイとして処刑された。彼は英雄でもスパイでもなく、ただの俳優にすぎなかったのにね。

彼の遺体もオリーブグリーンのバスローブにくるまれ、処刑された王様の隣に埋葬された。

今でもその国の首都にある墓地に行くと、その王様と俳優の墓が仲良く並んで建っているそうだ」

そこで一息ついて五反田君はウイスキーを一口飲んだ。彼は僕の目を見て言った。

「悲しくないか?」

「さあね」と僕は言った。