古上織蛍の日々の泡沫(うたかた)

歴史考察(戦国時代・三国志・関ヶ原合戦・石田三成等)、書評や、        日々思いついたことをつれづれに書きます。

大河ドラマ『真田丸』 第1回「船出」 感想

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 大河ドラマ真田丸』第1話「船出」の感想です。(ネタバレというか、あらすじ紹介をしていませんので、見ていないと意味が分からないかと思います。)

 

1.良かった点

武田勝頼・・・今回のドラマの良かった点は、ほとんど武田勝頼役を演じられた平岳大さんの演技に負う所が大なのではないでしょうか?滅びゆく武田家の当主として苦悩する勝頼の悲哀が感じられる素晴らしい演技でした。武田勝頼は「無能な二代目」というステレオタイプで描かれることも多いので、そのような単純な形にしなかった演出も好感が持てます。ただ、おそらくあと1回程度しか出番がないのでしょうね・・・・・・。それが残念です(役的に仕方ありませんが。)。

 

真田昌幸・・・賛否両論あるようですが、このドラマでは「食えない親父殿」という位置付と思われる真田昌幸役を、ユーモア(脚本によるものでしょうが)を交えて演じられた草刈正雄さんの演技も個人的には非常に好感が持てました。

 

2.微妙というか、懸念される点

真田信繁・・・真田信繁役を演じられた主役の堺雅人さんですが、なんかいつも薄笑いを浮かべ、ヘラヘラしているような感じです。「とらえどころのない(何を考えているのか分からないが、実は深い)人物」を演じているという設定(及びそのような演技指導)なのかもしれませんが、あまりそのように印象付けることに成功しておらず、ただ単に「いつもヘラヘラしているだけの人物」に見えます。今回は15歳の少年という設定だったせいなのかもしれませんし、今後成長していく設定なのだろうと思いますが、仮にずっとこのような演技(指導)だとするとあまりよろしくないかと思います。

 

・真田信幸・・・残念ですが大泉洋さんは、信幸役には合っていないと思います。いや、よく演技されているかと思うのですが、どうしても私が抱く真田信幸(信之)のイメージから大泉洋さんは遠く離れていて、演技によってもこれは埋めようがないだろうと開始前から思っていましたが、今回見てやはりこれはどうしようもないな、と思いました。とはいっても、これで1年いくというのは決まってしまっているので、あとは「このような信幸もありか」と、どれだけ慣れていけるかという感じですね。ただ、これは真田信幸(信之)に思い入れのある個人としての意見ですので、偏った意見であることは分かっていますし、大泉洋さんは好きな俳優の一人です。(私的には信幸役は堺雅人さんの方が合っていたと思っています。)

 

・脚本・・・いろいろコントぽい(「誰がそんなこと言ったんじゃ」とか、浅間山噴火とか、ホームコメディとか、湯漬けとか、指齧りとか)展開はありましたがまあ許容範囲だと思います。いや、それなりにクスリとさせられましたが、これで世の評判が良かったとなると、脚本家が暴走して本当にコメディドラマになりかねませんので褒めません。コント部分はなるべく控えめにしていただきたいです。

 

3.その他

 真田昌幸の正室薫殿(高畑淳子さん)は、「世間知らずの公家のお嬢様」という設定ですね。真田昌幸の正室山手殿(一般的には山手殿と呼ばれてます)の出自については諸説あります。かつては公家の菊亭晴季の娘(または養女)という説が有力視されていましたが、菊亭晴季娘(または養女)が、武田家の家臣に過ぎない真田昌幸に嫁ぐには家格的につり合いがとれないため近年疑問視されています。

 

 また、昌幸の正室が菊亭晴季娘(または養女)であるとすると、豊臣秀次切腹事件(秀次の正室一の台殿が菊亭晴季の娘であったため)の際に豊臣家から真田家に対してひと悶着ありそうですが、そのような記録はないようです。

 

 しかし、秀次と正室一の台殿の娘隆清院が豊臣秀次切腹事件後に真田信繁の側室になっています。(なぜ、信繁が隆清院を側室に迎えたのか経緯は不明です。)このことが誤って伝わったのが山手殿=菊亭晴季娘(または養女)説の原因となったのではないかと、個人的には思います。

 

 近年は同じく武田家の家臣であった宇多(尾藤)頼忠の娘=山手殿という説も有力です。この説で興味深いのは、石田三成も宇多(尾藤)頼忠の娘を正室に迎えており、これにより石田三成真田昌幸は相婿の関係となり、これが、真田昌幸関ヶ原の戦いの時に西軍についた大きな要因になっているのではないかということです。もっとも宇多(尾藤)頼忠の娘=山手殿説を疑問視する研究者もおり、結局どの説が正しいのか確定していません。

 

 このドラマでは、薫殿(山手殿)は、「公家の出」とされていますので、菊亭晴季娘(または養女)かどうかは不明ですが、山手殿=宇多(尾藤)頼忠の娘説はとっていないようですね。

 

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